前立腺肥大症による排尿障害の全て:症状から治療法まで徹底解説 - 富田林の泌尿器科

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前立腺肥大症による排尿障害の全て:症状から治療法まで徹底解説

はじめに

年齢を重ねると多くの男性が経験する「前立腺肥大症による排尿障害」。トイレが近くなる、尿の出が悪いなどの排尿トラブルは、日常生活に大きな影響を与えるだけでなく、精神的な負担にもなりがちです。

この記事では、前立腺肥大症が引き起こす様々な排尿障害について、症状の特徴から診断法、最新の治療法まで分かりやすく解説します。「これって前立腺肥大症かも?」と心配されている方、すでに症状に悩まされている方が適切な対処法を知り、安心して専門医に相談するための情報をお届けします。

前立腺肥大症とは?排尿障害との関係

前立腺は膀胱の出口(尿道)を取り囲む男性特有の臓器で、通常はクルミ大の大きさです。年齢とともに前立腺が肥大化し、尿道を圧迫することで様々な排尿障害が引き起こされる状態を「前立腺肥大症」と呼びます。

前立腺肥大症は加齢に伴う一般的な変化で、50歳以上の男性の約半数、80歳を超えると約8割の方に見られると報告されています。日本泌尿器科学会の調査によれば、60歳以上の男性の約37%が前立腺肥大症による何らかの排尿トラブルを抱えているとされています。

前立腺が肥大する主な原因は、加齢に伴うホルモンバランスの変化と考えられています。特に男性ホルモン(テストステロン)とその代謝産物であるジヒドロテストステロン(DHT)が前立腺の増殖に関与しています。

肥大した前立腺は尿道を圧迫・狭窄させるため、尿の流れが妨げられて排尿障害が生じます。また、膀胱は尿を排出するために余分な力を使うようになり、膀胱の筋肉(排尿筋)が厚くなったり過敏になったりして、頻尿などの蓄尿症状も引き起こします。

前立腺肥大症による主な排尿障害の症状

前立腺肥大症による排尿障害は、大きく「排尿症状」と「蓄尿症状」の二つに分類されます。それぞれの主な症状について詳しく見ていきましょう。

排尿症状(尿が出にくい症状)

  • 尿勢低下(尿の勢いが弱くなる)前立腺肥大症の代表的な症状の一つが尿勢の低下です。尿の勢いが弱くなり、尿線が細くなったと感じることがあります。若い頃は勢いよく飛んでいた尿が、足元に落ちるようになったと表現される方も多いです。
  • 排尿遅延(尿が出るまでに時間がかかる)トイレに立っても、すぐに尿が出ず、しばらく待たなければならないことがあります。これは尿道の圧迫により、排尿を開始するための圧力が十分にかからないために起こります。
  • 腹圧排尿(力まないと尿が出ない)自然に尿が出なくなり、お腹に力を入れないと排尿できなくなることがあります。この状態が続くと、排尿時の負担が増し、疲労感を感じることもあります。
  • 尿線途絶(尿の流れが途中で途切れる)排尿中に尿の流れが途切れ、再び力まないと出なくなることがあります。これも尿道の狭窄が原因で起こる症状です。
  • 残尿感(尿が残っている感覚)排尿後も膀胱に尿が残っているような感覚があります。実際に尿が残っていることもありますが、膀胱の過敏さからくる感覚的なものの場合もあります。

蓄尿症状(頻繁に尿意を感じる症状)

  • 頻尿(トイレが近くなる)日中に8回以上、または夜間に2回以上トイレに行く状態を頻尿と呼びます。前立腺肥大症では膀胱容量の減少や膀胱の過敏化により、少量の尿でも尿意を感じやすくなります。特に夜間頻尿は睡眠の質を低下させ、日中の活動にも影響を与えます。
  • 尿意切迫感(急に強い尿意を感じる)突然、我慢できないような強い尿意に襲われることがあります。この症状があると外出時に常にトイレの場所を気にしなければならず、社会活動の制限につながることもあります。
  • 切迫性尿失禁(尿意を我慢できずに漏れる)尿意切迫感があまりにも強く、トイレに間に合わず尿が漏れてしまうことがあります。この症状は特に精神的な負担が大きく、生活の質(QOL)を著しく低下させます。

これらの症状は個人差があり、すべての症状が現れるわけではありません。また、症状の重症度も人によって異なります。国際前立腺症状スコア(IPSS)というアンケートを用いて、症状の程度を数値化することで、適切な治療方針を決定する目安にしています。

排尿トラブルはいつ医師に相談すべき?

排尿トラブルを感じた場合、いつ医師に相談すべきか迷う方も多いでしょう。以下のような状況では、早めに泌尿器科を受診することをお勧めします。

受診を考えるべき排尿障害のサイン

  • ・夜間に2回以上トイレに起きる
  • ・排尿に時間がかかる、または排尿開始までに時間がかかる
  • ・尿の勢いが明らかに弱くなった
  • ・残尿感が頻繁にある
  • ・腹圧をかけないと排尿できない
  • ・突然の尿意を我慢できない
  • ・日常生活や睡眠が排尿トラブルによって妨げられている

特に以下のような緊急性の高い症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください:

  • ・突然まったく尿が出なくなった(急性尿閉)
  • ・下腹部の強い痛みがある
  • ・血尿がある
  • ・発熱を伴う排尿痛がある

泌尿器科を受診する際の心構え

前立腺肥大症による排尿障害は専門的な診断と治療が必要ですが、恥ずかしさから受診をためらう方も少なくありません。しかし、泌尿器科医はこうした症状を毎日診ており、適切な診断と治療を提供するプロフェッショナルです。

初診時には、症状についての詳しい問診、身体診察(直腸診を含む)、尿検査などが行われます。特に初めての方は緊張するかもしれませんが、的確な診断のために必要な過程ですので、安心して医師の指示に従いましょう。

事前に自分の症状をメモしておくと、診察がスムーズに進みます。いつ頃から症状が始まったか、どのような症状がどの程度の頻度であるかなど、できるだけ具体的に医師に伝えることが大切です。

前立腺肥大症による排尿障害の診断方法

前立腺肥大症による排尿障害の診断は、複数の検査を組み合わせて総合的に行われます。主な診断方法を見ていきましょう。

問診と症状評価

診断の第一歩は詳細な問診です。国際前立腺症状スコア(IPSS)という標準化されたアンケートを用いて、排尿障害の種類と重症度を評価します。IPSSは7つの質問項目から成り、各項目0〜5点の合計点(最大35点)で重症度を判定します。

  • ・軽症:0〜7点
  • ・中等症:8〜19点
  • ・重症:20〜35点

身体診察

泌尿器科医による身体診察では、特に直腸診が重要です。直腸診では医師が指を直腸に挿入し、前立腺の大きさや硬さ、表面の状態を触診で確認します。前立腺肥大症では前立腺が全体的に大きく、弾力性があり、表面は滑らかであることが特徴です。

尿検査と血液検査

尿検査では尿路感染症や血尿の有無、血液検査では腎機能や前立腺特異抗原(PSA)の値を調べます。PSAは前立腺の細胞から分泌されるタンパク質で、前立腺肥大症でも上昇しますが、前立腺がんの可能性も考慮して検査を行います。

画像検査

超音波検査(エコー)を用いて、前立腺の大きさや形状、残尿量を測定します。経腹的に行う場合と、より詳細な観察が可能な経直腸的に行う場合があります。必要に応じてMRI検査なども行われることがあります。

尿流測定検査

排尿時の尿の流れる速さ(尿流率)を測定する検査です。専用の装置に排尿し、尿流曲線を記録します。前立腺肥大症では最大尿流率の低下や排尿時間の延長が見られます。

膀胱内圧測定検査

重症例や複雑な症例では、カテーテルを用いて膀胱内の圧力を測定する検査(ウロダイナミクス検査)が行われることもあります。膀胱の機能を詳細に評価できる検査です。

これらの検査結果を総合的に判断して、前立腺肥大症による排尿障害の診断と重症度評価を行い、適切な治療方針を決定します。

排尿障害を改善する治療法とは?

前立腺肥大症による排尿障害の治療には、症状の程度や生活への影響、年齢などを考慮して、いくつかの選択肢があります。

薬物療法

軽度から中等度の症状に対しては、薬物療法が第一選択となることが多いです。主に使用される薬剤には以下のようなものがあります:

α1ブロッカー

尿道や膀胱頸部の平滑筋を弛緩させ、尿の通り道を広げる効果があります。比較的速やかに(1〜2週間程度)排尿症状を改善する効果が期待できます。タムスロシン、シロドシン、ナフトピジルなどが代表的な薬剤です。

5α還元酵素阻害薬

男性ホルモンが前立腺に作用するのを抑制し、前立腺の肥大そのものを抑える効果があります。効果の発現には3〜6ヶ月程度かかりますが、長期的に前立腺を縮小させる効果が期待できます。デュタステリド、フィナステリドなどがあります。

PDE5阻害薬

性機能障害治療薬として知られていますが、下部尿路症状の改善効果も認められています。タダラフィルが前立腺肥大症による排尿障害の治療薬として承認されています。

抗コリン薬・β3作動薬

頻尿や尿意切迫感などの蓄尿症状が強い場合に使用されることがあります。ソリフェナシン、ミラベグロンなどがあります。

手術療法

薬物療法で効果が不十分な場合や、急性尿閉を繰り返す場合、腎機能障害がある場合などは手術療法が検討されます。

経尿道的前立腺切除術(TURP)

内視鏡を用いて尿道から前立腺組織を切除する方法で、前立腺肥大症の標準的な手術です。入院期間は約1週間程度で、高い治療効果が期待できます。

光選択的前立腺蒸散術(PVP)

高出力のレーザーを用いて前立腺組織を蒸散させる方法です。出血が少なく、抗凝固剤を服用している患者さんにも適用できるメリットがあります。

前立腺動脈塞栓術(PAE)

カテーテルを用いて前立腺の血管を塞ぐことで、前立腺への血流を減少させ、前立腺を縮小させる方法です。体への負担が少なく、日帰りや短期入院で行える場合もあります。

経尿道的マイクロ波治療(TUMT)

尿道に挿入したカテーテルからマイクロ波を照射し、前立腺組織を加熱・壊死させる方法です。比較的低侵襲で行える治療法です。

経過観察(待機療法)

症状が軽度で生活に大きな支障がない場合は、定期的な診察を受けながら経過観察を行うこともあります。生活習慣の改善や自己管理によって症状のコントロールを試みる方法です。

治療法の選択は、症状の程度、前立腺の大きさ、年齢、合併症の有無、患者さんの希望など、様々な要素を考慮して個別に決定されます。どの治療法が最適かを医師と相談しながら決めていくことが大切です。

日常生活での排尿トラブル対策

前立腺肥大症による排尿障害は、日常生活の工夫によって症状を和らげることができる場合があります。ここでは自己管理のポイントを紹介します。

水分摂取の管理

適切な水分摂取は大切ですが、量やタイミングに注意しましょう。

  • ・一日の水分摂取量は1.5〜2リットル程度を目安に
  • ・就寝前2〜3時間は水分摂取を控えめにする
  • ・水分を一度にたくさん飲むのではなく、少量ずつこまめに飲む

食生活の改善

特定の食品や飲料は排尿障害を悪化させることがあります。

  • ・アルコールやカフェインは利尿作用があるため、特に夕方以降は控えめに
  • ・辛い食べ物や香辛料の過剰摂取を避ける
  • ・柑橘系の果物や酸味の強い食品も膀胱を刺激することがあるため注意

排尿習慣の改善

規則的な排尿習慣を身につけることで、症状管理に役立ちます。

  • ・2〜3時間おきの定時排尿を心がける
  • ・トイレに行きたいと感じたらなるべく我慢しない
  • ・排尿後、数秒待って再度力を入れることで残尿を減らす工夫を

適度な運動

適度な運動は全身の血流を改善し、前立腺の健康維持に役立ちます。

  • ・ウォーキングなどの有酸素運動を週3〜4回、30分程度行う
  • ・骨盤底筋体操を取り入れる(医師や理学療法士の指導のもとで)
  • ・長時間の座位姿勢を避け、定期的に立ち上がって体を動かす

寒さ対策

寒さは排尿障害を悪化させることがあります。

  • ・寒い季節は下半身を冷やさないよう注意する
  • ・就寝時も適切な室温と暖かい寝具を心がける
  • ・入浴で体を温めることも効果的

排尿障害対応グッズの活用

外出時や夜間の対策として、必要に応じて排尿障害対応グッズを活用することも検討しましょう。

  • ・携帯トイレ
  • ・尿取りパッド
  • ・排尿管理アプリ(排尿記録の管理に役立ちます)

これらの生活習慣の改善は、薬物療法や手術療法と併用することで、より効果的な症状コントロールにつながります。ただし、自己管理だけで対処しようとせず、必要に応じて医師の診察を受けることが大切です。

前立腺肥大症の排尿障害と間違えやすい疾患

前立腺肥大症による排尿障害と似た症状を示す他の疾患もあります。正確な診断と適切な治療のために、以下のような疾患との鑑別が重要です。

前立腺がん

前立腺肥大症と前立腺がんは共に前立腺に関連する疾患ですが、全く別の病気です。前立腺がんの初期では無症状のことも多いですが、進行すると前立腺肥大症と似た排尿障害を引き起こすことがあります。PSA検査や直腸診、必要に応じて生検などによって鑑別診断を行います。

過活動膀胱

頻尿や尿意切迫感が主な症状で、前立腺肥大症の蓄尿症状と似ています。過活動膀胱は膀胱の異常な収縮が原因で起こりますが、前立腺肥大症に続発して生じることもあります。尿流動態検査などで鑑別します。

神経因性膀胱

脳卒中、パーキンソン病、糖尿病などの基礎疾患によって神経系が障害され、膀胱機能に異常をきたす状態です。排尿障害のパターンが異なることもあり、基礎疾患の有無や神経学的検査などで鑑別します。

尿路感染症

頻尿や排尿痛などの症状が現れ、特に急性前立腺炎では下部尿路症状が急激に悪化することがあります。尿検査で白血球の増加や細菌の検出、発熱などの全身症状の有無によって鑑別します。

膀胱結石

膀胱内に形成された結石によって排尿障害が起こることがあります。特に排尿終末時の痛みや血尿が特徴的です。超音波検査やレントゲン検査で結石の有無を確認します。

尿道狭窄

外傷や手術後の瘢痕形成などによって尿道が狭くなり、排尿障害を引き起こすことがあります。尿道造影検査や尿道鏡検査によって診断されます。

正確な診断のためには、詳細な問診と適切な検査が重要です。自己判断せずに、排尿トラブルを感じたら泌尿器科を受診し、専門医の診断を受けることをお勧めします。

まとめ:前立腺肥大症の排尿障害を適切に管理するために

前立腺肥大症による排尿障害は、多くの中高年男性が経験する一般的な健康問題です。しかし、適切な知識と対応によって、その影響を最小限に抑え、生活の質を維持することが可能です。

排尿障害への対応ポイント

  • 1.早めの受診が大切排尿障害を感じたら、恥ずかしがらずに泌尿器科を受診しましょう。早期診断・早期治療が症状の進行防止につながります。
  • 2.適切な治療法の選択症状の程度や生活スタイルに合わせた治療法を医師と相談して選びましょう。薬物療法から手術療法まで、様々な選択肢があります。
  • 3.生活習慣の改善水分摂取の管理、食生活の見直し、規則的な排尿習慣など、日常生活の工夫で症状を和らげることができます。
  • 4.定期的な経過観察治療を始めた後も定期的に受診し、症状の変化や治療効果を確認することが大切です。
  • 5.合併症に注意排尿障害を放置すると、尿路感染症や腎機能障害などの合併症を引き起こす可能性があります。異変を感じたらすぐに医師に相談しましょう。

前立腺肥大症による排尿障害は「年のせい」とあきらめる必要はありません。現代の医学では、様々な治療法によって症状を改善し、生活の質を向上させることが可能です。適切な情報と医学的ケアを活用して、健やかな毎日を送りましょう。

排尿トラブルでお悩みの方は、ぜひ泌尿器科専門医にご相談ください。専門的な診断と個々の状況に合わせた治療によって、排尿障害の悩みから解放される第一歩となります。