腎機能障害 - 富田林の泌尿器科

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腎機能障害とは

腎機能障害の定義

腎機能障害とは、腎臓の機能が低下した状態のことを指します。腎臓は、体内の老廃物や余分な水分を尿として体外に排出し、体内の水分や電解質のバランスを調整する重要な役割を担っています。
また、血圧の調整やエリスロポエチンの産生、ビタミンDの活性化など、多岐にわたる機能を有しています。
しかし、何らかの原因で腎臓の機能が低下すると、これらの機能が正常に働かなくなり、老廃物や余分な水分が体内に蓄積し、様々な症状が現れます。

腎機能障害は、腎糸球体濾過量(GFR)という指標を用いて評価されます。GFRは、腎臓が1分間に濾過する血液の量を表し、年齢や性別によって基準値が異なります。一般的に、GFRが60mL/分/1.73m²未満の状態が3ヶ月以上続く場合、慢性腎臓病(CKD)と診断されます。
CKDは、腎機能障害の重症度に応じてステージ1から5に分類されます。ステージが進行するにつれて、腎機能は低下し、様々な合併症のリスクが高まります。

腎機能障害は、急性と慢性に分類されます。急性腎機能障害は、数日から数週間で突然発症し、適切な治療により回復が期待できる状態です。
一方、慢性腎機能障害は、数ヶ月から数年にわたって徐々に進行し、不可逆的な腎臓の損傷を引き起こします。
慢性腎機能障害は、初期段階では自覚症状に乏しいため、定期的な健康診断や腎機能検査が重要です。

腎機能障害の原因

腎機能障害の原因は多岐にわたりますが、主なものは以下の通りです。

  • 糖尿病高血糖状態が長期間続くと、腎臓の細小血管が損傷を受け、腎機能が低下します。糖尿病性腎症は、成人における慢性腎機能障害の最も一般的な原因です。
  • 高血圧高血圧は腎臓の血管を傷つけ、腎機能の低下を引き起こします。高血圧は、糖尿病とともに慢性腎機能障害の主要なリスク因子です。
  • 慢性糸球体腎炎免疫システムの異常により、腎臓の糸球体が炎症を起こし、腎機能が低下します。IgA腎症や膜性腎症などが含まれます。
  • 多発性嚢胞腎遺伝的要因により、腎臓に多数の嚢胞が形成され、腎機能が低下します。常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)が代表的です。
  • 薬剤性腎障害特定の薬剤の長期使用や大量投与により、腎臓が損傷を受けることがあります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアミノグリコシド系抗菌薬などが知られています。
  • 尿路閉塞尿路結石や前立腺肥大など、尿の流れを妨げる状態が続くと、腎機能が低下します。
  • 急性腎障害脱水や感染症、敗血症などにより、急激に腎機能が低下する状態です。早期の適切な治療により、回復が期待できます。
  • 全身性疾患全身性エリテマトーデス(SLE)や血管炎など、全身性の炎症性疾患により腎臓が障害されることがあります。

これらの原因は、単独で存在する場合もあれば、複数の要因が重なって腎機能障害を引き起こす場合もあります。原因の特定と適切な管理が、腎機能障害の進行を抑制する上で重要です。

腎機能障害の症状

腎機能障害の初期段階では、自覚症状がほとんどない場合が多いです。
これは、腎機能の低下が徐々に進行するため、体がその変化に適応していくためです。しかし、腎機能が低下するにつれて、以下のような症状が現れます。

  • 倦怠感や疲労感老廃物の蓄積により、体がだるく感じたり、疲れやすくなったりします。
  • 食欲不振や体重減少尿毒症物質の蓄積により、食欲が低下し、体重が減少することがあります。
  • むくみ(特に顔や足)腎機能の低下により、体内の余分な水分が排出されにくくなり、むくみが生じます。
  • 尿量の変化(多尿または乏尿)腎機能の低下により、尿量が増加したり、減少したりすることがあります。
  • 尿の色の変化(泡立ちや血尿)タンパク尿や血尿が見られることがあります。
  • 皮膚のかゆみ尿毒症物質の蓄積により、皮膚にかゆみが生じることがあります。
  • 息切れや動悸貧血により、酸素運搬能力が低下し、息切れや動悸が生じることがあります。
  • 吐き気や嘔吐尿毒症物質の蓄積により、消化器症状が現れることがあります。
  • 高血圧腎機能の低下により、血圧が上昇することがあります。
  • 貧血エリスロポエチンの産生低下により、赤血球の産生が低下し、貧血が生じます。

これらの症状は、腎機能障害に特異的なものではなく、他の疾患でも見られる場合があります。
また、症状の現れ方には個人差があり、腎機能障害が進行しても無症状の場合もあります。
そのため、症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
定期的な健康診断や腎機能検査により、早期の腎機能障害を発見し、適切な管理を行うことが、重症化を防ぐ上で大切です。

腎機能障害の診断

腎機能障害の診断には、主に以下の検査が行われます。

血液検査

  • クレアチニン筋肉の代謝産物であり、腎機能の指標として用いられます。腎機能が低下すると、血中のクレアチニン値が上昇します。
  • シスタチンC糸球体濾過量を反映する腎機能マーカーです。クレアチニンよりも腎機能の早期変化を捉えやすいとされています。
  • 尿素窒素(BUN)タンパク質の代謝産物であり、腎機能の指標として用いられます。腎機能が低下すると、血中のBUN値が上昇します。
  • 電解質ナトリウム、カリウム、クロールなどの電解質バランスを評価します。腎機能障害では、これらの電解質異常が見られることがあります。
  • ヘモグロビン貧血の評価に用いられます。腎機能障害では、エリスロポエチンの産生低下により貧血が生じます。

尿検査

  • 尿タンパク腎臓の糸球体や尿細管の障害により、尿中にタンパク質が漏出します。早期の腎機能障害の発見に有用です。
  • 尿潜血腎臓や尿路の出血を示唆します。糸球体腎炎や尿路結石などで見られることがあります。
  • 尿沈渣尿中の赤血球や白血球、円柱などを顕微鏡で観察します。腎臓や尿路の炎症や障害を示唆します。
  • 尿中アルブミン微量アルブミン尿は、早期の糖尿病性腎症の指標として用いられます。

画像検査

  • 超音波検査腎臓の大きさや形態、嚢胞の有無などを評価します。非侵襲的で簡便な検査です。
  • CT検査腎臓の構造的異常や腫瘍、結石などを詳細に評価します。造影剤を用いることで、腎血流や尿路の評価も可能です。
  • MRI検査CT検査と同様の情報が得られますが、放射線被曝がありません。腎機能が低下している患者に適しています。

腎生検

腎臓の一部を採取し、顕微鏡で観察することで、腎臓の病変を詳細に評価します。糸球体腎炎や間質性腎炎などの診断に有用です。
腎生検は侵襲的な検査であり、出血などのリスクがあるため、必要性を十分に検討した上で実施されます。

これらの検査結果を総合的に判断し、腎機能障害の原因や重症度を特定します。また、腎機能障害の経過を評価するために、定期的な検査が行われます。検査結果に基づいて、適切な治療方針が決定されます。

腎機能障害の治療

腎機能障害の治療は、原因疾患の管理と腎機能の維持を目的として行われます。治療法は、腎機能障害の重症度や患者の全身状態によって異なりますが、主に以下の3つに分類されます。

薬物療法

腎機能障害の原因となる疾患(糖尿病や高血圧など)に対する治療が基本となります。また、腎機能の低下に伴う合併症(貧血や骨ミネラル代謝異常など)に対しても、適切な薬物療法が行われます。

主な薬剤は以下の通りです。

血糖降下薬

  • インスリン膵臓から分泌されるホルモンであり、血糖値を低下させます。腎機能障害では、インスリンの分解が遅延するため、低血糖に注意が必要です。
  • 経口血糖降下薬メトホルミンやSGLT2阻害薬など、様々な種類があります。腎機能に応じた薬剤の選択と用量調整が重要です。

降圧薬

  • ACE阻害薬やARBレニン-アンジオテンシン系を抑制し、血圧を下げるとともに、腎保護作用を有します。
  • カルシウム拮抗薬血管を拡張させ、血圧を下げます。
  • 利尿薬体内の余分な水分を排出し、血圧を下げます。腎機能に応じた用量調整が必要です。

貧血治療薬

  • エリスロポエチン製剤腎臓で産生されるエリスロポエチンが不足した場合、赤血球の産生を促進します。
  • 鉄剤鉄欠乏性貧血の改善に用いられます。

リン吸着薬

  • 炭酸カルシウムやセベラマーなど食事から摂取したリンを吸着し、体内への吸収を抑制します。
    ランタンカルボネートや塩酸スクロオキシ水酸化鉄など、新しいリン吸着薬も使用されています。

活性型ビタミンD製剤

カルシトリオールやアルファカルシドールなど:腎機能障害により活性化が低下したビタミンDを補充し、骨ミネラル代謝異常を改善します。

これらの薬剤は、患者の腎機能や全身状態、合併症の有無などを考慮して選択されます。また、定期的な検査により、薬剤の効果や副作用をモニタリングし、必要に応じて薬剤の調整を行います。

食事療法

腎機能障害では、タンパク質やカリウム、リンなどの摂取制限が必要となります。これらの栄養素は、腎機能の低下に伴って体内に蓄積しやすくなるため、適切な制限が重要です。

  • タンパク質制限 腎機能障害の進行抑制と尿毒症症状の軽減を目的として行われます。
    ステージに応じて、0.6〜0.8g/kg/日程度に制限します。
    必須アミノ酸やケト酸アナログ製剤の補充により、タンパク質制限による栄養不足を予防します。
  • カリウム制限 高カリウム血症の予防を目的として行われます。
    ステージに応じて、1日2,000mg以下に制限します。
    野菜や果物、豆類などのカリウムを多く含む食品の摂取を控えめにします。
    調理の工夫(野菜の茹でこぼしや水さらしなど)により、カリウム含有量を減らすことができます。
  • リン制限 高リン血症と副甲状腺機能亢進症の予防を目的として行われます。
    ステージに応じて、1日800〜1,000mg以下に制限します。
    乳製品や加工食品、リンを多く含む食品の摂取を控えめにします。
    リン吸着薬の使用により、食事からのリン吸収を抑制します。
  • 塩分制限 高血圧や浮腫の管理を目的として行われます。
    1日6g未満を目標とします。
    加工食品や調理の際の塩分使用量に注意します。
  • エネルギー摂取 タンパク質制限によるエネルギー不足を予防するため、十分なエネルギー摂取が必要です。
    体重や身体活動量に応じて、25〜35kcal/kg/日程度のエネルギー摂取を目指します。
    炭水化物や良質な脂肪を適度に摂取し、エネルギー源とします。

これらの食事療法は、腎臓病専門の管理栄養士と協力し、患者の腎機能や全身状態、嗜好などを考慮して個別に調整されます。
また、定期的な栄養評価と食事指導により、適切な栄養管理を継続することが重要です。

透析療法

腎機能が著しく低下し、体内の老廃物や余分な水分を排出できなくなった状態(末期腎不全)では、透析療法が必要となります。透析療法には、主に血液透析と腹膜透析の2種類があります。

  • 血液透析 血液を体外に取り出し、透析機器を用いて老廃物や余分な水分を除去します。
    通常、週3回、1回4時間程度の治療が行われます。
    血液アクセス(シャントや留置カテーテル)が必要です。
    医療機関での治療が基本ですが、在宅血液透析も可能です。
  • 腹膜透析 腹腔内に透析液を注入し、腹膜を半透膜として老廃物や余分な水分を除去します。
    連日、1日4回程度の透析液交換が必要です。
    腹腔内にカテーテルを留置します。
    自宅で行うことができ、携帯型の機器を用いた自動腹膜透析も可能です。

透析療法は、腎機能障害患者の生命維持に不可欠な治療法ですが、患者のQOLを大きく損なう可能性もあります。そのため、透析導入の時期や方法については、患者や家族と十分に話し合い、社会的・経済的状況も考慮して慎重に決定する必要があります。また、透析療法を受けながら、残存腎機能の保護と合併症の予防・管理を継続することが重要です。

腎移植は、末期腎不全に対する根本的な治療法であり、透析療法からの離脱と高いQOLの実現が期待できます。ドナーから提供された健康な腎臓を患者に移植することで、腎機能の回復が得られます。移植腎の生着率は向上しており、長期的な予後も改善しています。しかし、ドナー不足や免疫抑制療法に伴う合併症など、克服すべき課題も残されています。

腎機能障害は、早期発見と適切な治療が重要な疾患です。定期的な健康診断や自覚症状に注意し、異常が見られた場合は速やかに医療機関を受診しましょう。また、腎機能障害と診断された場合は、医師や管理栄養士と協力し、適切な治療と生活管理を継続することが大切です。患者自身が病態を理解し、積極的に療養に取り組むことが、予後の改善につながります。

さらに、腎機能障害の予防も重要な課題です。生活習慣の改善により、腎機能障害の発症リスクを下げることができます。具体的には、以下のような取り組みが推奨されます。

肥満の予防と解消
適度な運動の実践
バランスの取れた食事の摂取
禁煙
過度な飲酒の制限
ストレス管理

特に、糖尿病や高血圧は腎機能障害の主要なリスク因子であるため、これらの疾患の予防と適切な管理が重要です。定期的な健康診断を受け、早期に異常を発見し、生活習慣の改善や薬物療法を開始することが、腎機能障害の予防につながります。

国や自治体、医療機関、患者団体などが連携し、腎機能障害に関する啓発活動や早期発見のための取り組みを推進することも重要です。世界腎臓デーや腎臓病予防キャンペーンなどを通じて、国民の関心を高め、予防と早期発見の重要性を伝えていく必要があります。

腎機能障害は、患者とその家族の生活に大きな影響を及ぼす疾患です。医療者と患者、家族が一体となり、適切な治療と生活管理を継続することが、より良い予後の実現につながります。社会全体で腎機能障害に対する理解を深め、支援体制を整備していくことが求められています。