尿路上皮腫瘍 - 富田林の泌尿器科

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尿路上皮腫瘍とは

尿路上皮腫瘍の定義

尿路上皮腫瘍は、尿路系を覆う上皮組織である尿路上皮から発生する悪性腫瘍の総称です。尿路上皮は、腎盂、尿管、膀胱、尿道に存在し、尿の貯留と排出に関与しています。尿路上皮腫瘍は、これらの部位のいずれかに発生し、無秩序な細胞増殖により腫瘍を形成します。

尿路上皮腫瘍は、尿路系悪性腫瘍の中で最も頻度が高く、特に膀胱癌は全尿路上皮腫瘍の約90%を占めています。尿路上皮腫瘍は、表在性腫瘍と浸潤性腫瘍に大別されます。表在性腫瘍は、粘膜内にとどまる非浸潤性腫瘍であり、予後は比較的良好ですが、再発率が高いという特徴があります。一方、浸潤性腫瘍は、筋層や周囲組織に浸潤する悪性度の高い腫瘍であり、転移のリスクが高く、予後不良です。

尿路上皮腫瘍の発生には、様々な危険因子が関与しています。喫煙は最も重要な危険因子の一つであり、喫煙者では非喫煙者と比べて尿路上皮腫瘍の発生リスクが2〜4倍高いとされています。また、特定の化学物質や職業的曝露、慢性的な膀胱炎、長期間の尿道カテーテル留置なども、尿路上皮腫瘍の発生に関与すると考えられています。

尿路上皮腫瘍は、早期発見と適切な治療が予後の改善に重要です。血尿や頻尿、排尿時痛などの症状が見られた場合は、速やかに医療機関を受診し、精査を受けることが大切です。また、定期的な検診により、無症状の早期腫瘍を発見することも可能です。

尿路上皮腫瘍の種類

尿路上皮腫瘍は、発生部位によって以下の3つに分類されます。

膀胱癌

膀胱癌は、膀胱の尿路上皮から発生する悪性腫瘍であり、尿路上皮腫瘍の中で最も頻度が高い種類です。膀胱癌の約70〜80%は表在性腫瘍であり、粘膜内にとどまる非浸潤性の乳頭状腫瘍が多くを占めます。表在性膀胱癌は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)により治療されますが、再発率が高いため、定期的な経過観察が必要です。

一方、浸潤性膀胱癌は、筋層や周囲組織に浸潤する悪性度の高い腫瘍であり、リンパ節や遠隔臓器への転移のリスクが高くなります。浸潤性膀胱癌の治療には、根治的膀胱全摘術や化学療法、放射線療法などが用いられます。

腎盂癌

腎盂癌は、腎盂の尿路上皮から発生する悪性腫瘍です。腎盂は、腎臓で生成された尿を集める漏斗状の構造であり、尿管につながっています。腎盂癌は、尿路上皮腫瘍の約5〜10%を占めており、膀胱癌と比べて頻度は低いですが、より進行した状態で発見されることが多いという特徴があります。

腎盂癌の治療には、腎尿管全摘術が第一選択となります。腎臓と尿管を一塊として摘出することで、腫瘍の完全切除を目指します。術後の補助化学療法や、転移を有する症例に対する全身化学療法も行われます。

尿管癌

尿管癌は、尿管の尿路上皮から発生する悪性腫瘍です。尿管は、腎盂から膀胱へと尿を運ぶ管状の構造であり、左右に1本ずつ存在します。尿管癌は、尿路上皮腫瘍の約5%を占めており、比較的まれな腫瘍です。

尿管癌の治療では、腎尿管全摘術が基本となります。腫瘍の位置や進行度によっては、尿管部分切除術や内視鏡的切除術が選択されることもあります。術後の補助化学療法や、転移を有する症例に対する全身化学療法も行われます。

尿路上皮腫瘍の種類によって、発生頻度や進行度、治療方針などが異なります。しかし、いずれの種類においても、早期発見と適切な治療が予後の改善に重要であることに変わりはありません。

尿路上皮腫瘍の症状

尿路上皮腫瘍の症状は、腫瘍の発生部位や進行度によって異なりますが、以下のような症状が見られることがあります。

  • 血尿尿に血液が混じる症状であり、尿路上皮腫瘍の最も一般的な症状です。肉眼的血尿(見た目で血尿がわかる状態)や顕微鏡的血尿(尿検査で血尿が検出される状態)が見られます。
  • 頻尿尿意が頻回に起こり、尿量が少ない状態が続く症状です。腫瘍が膀胱の容量を減少させたり、刺激症状を引き起こしたりすることが原因です。
  • 排尿時痛尿を出す際に痛みや不快感を伴う症状です。腫瘍による膀胱の炎症や、尿道の閉塞などが原因となります。
  • 尿意切迫感急に強い尿意を感じ、我慢できない症状です。腫瘍による膀胱の刺激が原因です。
  • 腰背部痛腎盂癌や尿管癌で見られることがある症状です。腫瘍による尿路の閉塞や、周囲組織への浸潤が原因となります。
  • 体重減少や食欲不振進行した尿路上皮腫瘍で見られることがある全身症状です。腫瘍による代謝の変化や、全身状態の悪化が原因となります。

これらの症状は、尿路上皮腫瘍に特異的なものではなく、他の尿路系疾患でも見られる可能性があります。しかし、これらの症状が継続する場合や、血尿が見られた場合は、速やかに医療機関を受診し、精査を受けることが重要です。早期発見と適切な治療が、予後の改善につながります。

尿路上皮腫瘍の原因

尿路上皮腫瘍の発生には、様々な危険因子が関与していると考えられています。以下に、主な危険因子を挙げます。

  • 喫煙喫煙は、尿路上皮腫瘍の最も重要な危険因子の一つです。喫煙者では、非喫煙者と比べて尿路上皮腫瘍の発生リスクが2〜4倍高くなります。喫煙による発癌物質が、尿中に排泄され、尿路上皮に長期間接触することが、発癌のメカニズムと考えられています。
  • 職業的曝露特定の化学物質に長期間曝露される職業では、尿路上皮腫瘍の発生リスクが高くなります。芳香族アミンや多環芳香族炭化水素など、染料や顔料、ゴム、化学工業で使用される物質が、発癌性を有しています。
  • 慢性膀胱炎長期間にわたる膀胱の炎症は、尿路上皮腫瘍の発生リスクを高めます。特に、ビルハルツ住血吸虫症による慢性膀胱炎は、扁平上皮癌の発生と関連しています。
  • 尿路奇形先天性の尿路奇形や、後天的な尿路の変更(尿路変向術など)は、尿の停滞や慢性炎症を引き起こし、尿路上皮腫瘍の発生リスクを高めます。
  • 遺伝的要因尿路上皮腫瘍の発生には、遺伝的な素因も関与していると考えられています。第9番染色体と第22番染色体の異常が、尿路上皮腫瘍の発生と関連することが報告されています。
  • 加齢尿路上皮腫瘍の発生リスクは、加齢とともに増加します。50歳以上の人で、発生頻度が高くなります。
  • 性別尿路上皮腫瘍は、男性で発生頻度が高く、男女比は約3:1です。
  • 人種欧米諸国では、尿路上皮腫瘍の発生率が高く、特に白人男性で多くみられます。一方、アジアや南米では、発生率が低い傾向にあります。

これらの危険因子は、尿路上皮腫瘍の発生に関与していますが、単一の因子だけでなく、複数の因子が複雑に絡み合って発癌に至ると考えられています。危険因子を理解し、可能な限り回避することが、尿路上皮腫瘍の予防につながります。

尿路上皮腫瘍の診断

尿路上皮腫瘍の診断には、以下のような検査が行われます。

  • 尿細胞診尿中の異型細胞を顕微鏡で観察し、腫瘍の存在を推定する検査です。非侵襲的で簡便な検査ですが、偽陰性や偽陽性の可能性があります。
  • 尿中腫瘍マーカー尿中に排泄される腫瘍関連物質を測定し、腫瘍の存在を推定する検査です。NMP22やBTA、サイトケラチン19fragmentsなどが用いられます。
  • 膀胱鏡検査膀胱内を直接観察する検査です。細い内視鏡を尿道から膀胱内に挿入し、腫瘍の有無や性状を確認します。必要に応じて、生検も行われます。
  • CT検査尿路系の構造を詳細に評価する検査です。腫瘍の位置や大きさ、周囲臓器への浸潤の有無などを確認します。
  • MRI検査CT検査と同様の情報が得られる検査です。軟部組織のコントラストに優れており、膀胱壁の浸潤度評価に有用です。
  • 尿路造影検査尿路系に造影剤を注入し、レントゲン撮影を行う検査です。腫瘍による尿路の閉塞や変形を評価します。
  • 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)膀胱鏡を用いて、膀胱腫瘍を切除する検査と治療を兼ねた手技です。切除した腫瘍組織を病理学的に評価し、腫瘍の性状や深達度を確認します。
  • 上部尿路内視鏡検査腎盂や尿管の腫瘍を直接観察する検査です。細い内視鏡を尿管から挿入し、腫瘍の有無や性状を確認します。
  • これらの検査を組み合わせることで、尿路上皮腫瘍の存在や広がり、性状などを総合的に評価し、治療方針を決定します。また、診断後は定期的な経過観察が重要であり、再発や進行の有無を確認するために、これらの検査が繰り返し行われます。

    尿路上皮腫瘍の治療

    尿路上皮腫瘍の治療は、腫瘍の発生部位や進行度、患者の全身状態などを考慮して、個別に決定されます。以下に、主な治療法を挙げます。

    手術療法

    手術療法は、尿路上皮腫瘍の根治を目指す治療法です。腫瘍の発生部位や進行度によって、以下のような手術が行われます。

    • 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)膀胱鏡を用いて、膀胱腫瘍を切除する手技です。表在性膀胱癌の診断と治療に用いられます。
    • 膀胱全摘術膀胱を全て摘出する手術です。浸潤性膀胱癌や、表在性膀胱癌の再発を繰り返す症例に対して行われます。膀胱全摘後は、尿路変向術を行い、尿の排出経路を確保します。
    • 腎尿管全摘術腎臓と尿管を一塊として摘出する手術です。腎盂癌や尿管癌の治療に用いられます。

    手術療法は、尿路上皮腫瘍の根治を目指す上で重要な役割を果たしますが、腫瘍の進行度によっては、単独では不十分な場合もあります。そのような場合は、化学療法や放射線療法などと組み合わせた集学的治療が行われます。

    化学療法

    化学療法は、抗がん剤を用いて全身的に癌細胞を攻撃する治療法です。尿路上皮腫瘍に対する化学療法には、以下のような種類があります。

    • 膀胱内注入療法抗がん剤を直接膀胱内に注入する治療法です。表在性膀胱癌の再発予防や、上皮内癌の治療に用いられます。BCG(結核菌)やマイトマイシンC、ドキソルビシンなどが用いられます。
    • 全身化学療法静脈内に抗がん剤を投与する治療法です。浸潤性膀胱癌や転移を有する尿路上皮腫瘍に対して行われます。ゲムシタビンやシスプラチン、メトトレキサートなどが用いられます。

    化学療法は、手術療法との組み合わせで用いられることが多く、術前や術後の補助療法として行われます。また、進行した尿路上皮腫瘍に対しては、化学療法が主体となる場合もあります。化学療法の副作用には、骨髄抑制や消化器症状、脱毛などがありますが、支持療法により軽減することが可能です。

    免疫療法

    免疫療法は、患者自身の免疫システムを活性化し、癌細胞を攻撃する治療法です。尿路上皮腫瘍に対する免疫療法には、以下のような種類があります。

    • BCG膀胱内注入療法結核菌であるBCGを膀胱内に注入する治療法です。BCGにより活性化された免疫細胞が、膀胱内の癌細胞を攻撃します。表在性膀胱癌の再発予防や、上皮内癌の治療に用いられます。
    • 免疫チェックポイント阻害薬PD-1/PD-L1やCTLA-4などの免疫チェックポイント分子を阻害する抗体薬です。癌細胞による免疫抑制を解除し、T細胞による癌細胞の攻撃を促進します。進行した尿路上皮腫瘍に対して用いられます。

    免疫療法は、化学療法との併用や、単独での使用が可能です。副作用には、自己免疫関連有害事象があり、甲状腺機能低下症や大腸炎、間質性肺炎などが知られています。適切な管理と早期発見が重要です。

    尿路上皮腫瘍の治療は、腫瘍の性状や進行度、患者の全身状態などを総合的に考慮して決定されます。手術療法、化学療法、免疫療法を適切に組み合わせることで、治療効果の最大化と副作用の最小化を目指します。また、治療後の定期的な経過観察により、再発や進行の早期発見に努めることが重要です。

    尿路上皮腫瘍は、早期発見と適切な治療が予後の改善に大きく影響する疾患です。血尿などの症状が見られた場合は、速やかに医療機関を受診し、精査を受けることが大切です。また、喫煙は尿路上皮腫瘍の最大の危険因子であるため、禁煙が予防に重要な役割を果たします。

    尿路上皮腫瘍と診断された場合は、医療者と十分に話し合い、自分に合った治療法を選択することが大切です。治療の過程では、身体的・精神的な負担が大きくなることもありますが、適切なサポートを受けながら、前向きに治療に取り組むことが重要です。

    また、尿路上皮腫瘍の克服には、予防と早期発見の取り組みが欠かせません。禁煙の推進や、職業的曝露の管理、定期的な検診の普及など、社会全体で尿路上皮腫瘍に対する理解を深め、リスクを低減するための努力が求められています。

    医療者と患者、そして社会が一体となって、尿路上皮腫瘍の予防と治療に取り組むことが、この疾患の克服につながるでしょう。