前立腺肥大症と前立腺癌の違い|症状・検査・治療法の徹底比較 - 富田林の泌尿器科

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前立腺肥大症と前立腺癌の違い|症状・検査・治療法の徹底比較

はじめに

前立腺に違和感を覚えたとき、多くの男性が頭をよぎるのが「がんではないか」という不安です。実際には、前立腺の問題の多くは良性の前立腺肥大症であることが大半です。しかし、症状が似ているため、混同されやすい前立腺肥大症と前立腺癌。

どちらも50歳以上の男性に多く発症するため、「尿の出が悪い」「夜間頻尿がある」といった症状があるとき、どちらの可能性があるのか気になるところです。

本記事では、この2つの疾患の症状、検査方法、治療法などの違いを詳しく解説し、適切な医療機関への受診の重要性をお伝えします。早期発見・早期治療が可能な前立腺の病気について正しい知識を身につけ、健康管理に役立てましょう。

前立腺肥大症と前立腺癌とは?基本的な違い

前立腺は膀胱の出口にある栗の実ほどの大きさの臓器で、加齢とともに様々な問題が生じやすくなります。前立腺に関わる代表的な疾患である前立腺肥大症と前立腺癌について、その基本的な違いを見ていきましょう。

前立腺肥大症の特徴

前立腺肥大症は、前立腺の内腺という部分が加齢に伴って肥大する良性疾患です。50歳以上の男性に多く見られ、年齢が上がるにつれて発症率も上昇します。60歳代で約半数、80歳代では8割以上の男性が何らかの症状を持つとされています。

前立腺が肥大すると、尿道を圧迫して排尿障害を引き起こします。初期は軽度の症状から始まりますが、進行すると生活の質を大きく低下させる原因となります。重要なポイントは、前立腺肥大症は「がん」ではないということです。良性の変化であり、生命に直接関わることは少ない疾患です。

前立腺癌の特徴

一方、前立腺癌は前立腺の細胞ががん化した悪性腫瘍です。日本人男性のがんの中で罹患率が増加傾向にあり、近年では年間約9万人が新たに診断されています。前立腺癌も高齢になるほど発症リスクが高まり、65歳以上の男性に多く見られます。

前立腺癌の特徴は、初期には自覚症状がほとんどないことです。進行して大きくなると排尿障害などの症状が現れますが、この時点では既に進行している可能性があります。また、骨などへの転移を起こしやすいことも特徴で、早期発見・早期治療が非常に重要ながんの一つです。

発生部位の違い

両者の大きな違いの一つが、発生する部位です。前立腺肥大症は前立腺の内側(内腺)から発生するのに対し、前立腺癌は主に前立腺の外側(外腺)から発生します。このような発生部位の違いが、後述する症状の違いにも関連してきます。

症状の違いは?見分け方はあるの?

前立腺肥大症と前立腺癌、どちらも排尿に関する症状が現れますが、その現れ方や進行過程には違いがあります。自分自身で完全に見分けることは難しいですが、参考になる症状の特徴を解説します。

前立腺肥大症の主な症状

前立腺肥大症の症状は、前立腺が大きくなって尿道を圧迫することにより生じる「排尿障害」が中心です。
具体的には以下のような症状が見られます:

  • 尿の勢いが弱くなる尿の出が悪くなり、勢いが弱まります
  • 排尿に時間がかかる排尿を始めるまでに時間がかかったり、排尿に時間を要します
  • 残尿感排尿後も膀胱に尿が残っている感覚があります
  • 頻尿短時間で何度もトイレに行く必要があります
  • 夜間頻尿夜中に何度もトイレに起きる状態になります
  • 尿意切迫感突然強い尿意を感じ、我慢できなくなります

これらの症状は通常、徐々に進行し、数か月から数年かけてゆっくりと悪化していきます。痛みを伴うことは少なく、日常生活の質の低下として自覚されることが多いです。

前立腺癌の症状の特徴

前立腺癌の最大の特徴は、初期にはほとんど症状がないことです。多くの場合、健康診断などで偶然発見されるか、進行してから以下のような症状が現れます:

  • 排尿障害前立腺肥大症と似た排尿困難、頻尿などの症状
  • 血尿や血精液尿や精液に血が混じることがあります
  • 下部腰痛や骨の痛み進行して骨に転移した場合に現れる症状
  • 全身倦怠感や体重減少がんの進行に伴う全身症状

前立腺癌特有の初期症状はあまりないため、前立腺肥大症と自己判断で区別することは困難です。両者の症状は重複することも多く、医師による専門的な検査が不可欠です。

見分けるための重要なポイント

症状だけでは両者を完全に区別することは難しいですが、以下のポイントは注意が必要です:

  • 症状の進行速度前立腺肥大症はゆっくり進行しますが、前立腺癌の場合、比較的短期間で症状が悪化することがあります
  • 血尿の有無前立腺肥大症でも稀に血尿が見られますが、突然の血尿は前立腺癌の可能性も考慮すべきサインです
  • 痛みの有無骨の痛みや下腹部の不快感が強い場合は、前立腺癌の可能性を検討する必要があります

いずれにしても、これらの症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかに泌尿器科を受診することが重要です。医師による適切な検査によってのみ、正確な診断が可能となります。

検査方法の比較|何が違う?

前立腺肥大症と前立腺癌を区別するためには、専門的な検査が必要です。両疾患の診断に用いられる検査方法とその違いについて解説します。

共通する基本検査

まず、両疾患の診断で共通して行われる基本的な検査には以下のものがあります:

  • 問診症状の経過や家族歴などを確認します
  • 直腸診指を直腸に挿入して前立腺の形状や硬さを触診します
  • 尿検査尿の状態を確認し、血尿や炎症の有無をチェックします
  • 超音波検査前立腺の大きさや形状を画像で確認します

これらの検査は初診時に一般的に行われるもので、前立腺の状態を大まかに把握するために重要です。

前立腺肥大症の診断に特徴的な検査

前立腺肥大症の診断では、主に排尿機能に関する以下の検査が重視されます:

  • 国際前立腺症状スコア(IPSS)排尿症状の重症度を評価する質問票
  • 尿流測定排尿時の尿の勢いや量を測定する検査
  • 残尿測定排尿後に膀胱に残っている尿の量を測定します

これらの検査は、症状の重症度を客観的に評価し、治療方針を決定するのに役立ちます。

前立腺癌の診断に特徴的な検査

前立腺癌の診断では、がんの有無や進行度を確認するための特殊な検査が行われます:

  • PSA検査血液中の前立腺特異抗原(PSA)の値を測定します。前立腺癌ではPSA値が上昇することが多いですが、前立腺肥大症や炎症でも上昇することがあるため、補助的診断となります
  • MRI検査前立腺の詳細な画像を撮影し、がんの疑いがある部位を特定します
  • 前立腺生検MRIなどで疑わしい部分があれば、針を刺して組織を採取し、顕微鏡で調べる検査です。前立腺癌の確定診断にはこの生検が必須となります
  • 骨シンチグラフィー進行した前立腺癌で骨転移の有無を調べる検査です

検査結果の解釈の違い

前立腺肥大症の検査では、前立腺の大きさや排尿障害の程度が重視されるのに対し、前立腺癌の検査では悪性細胞の有無やその広がりに焦点が当てられます。

PSA検査は両疾患の鑑別に重要ですが、数値だけで判断できるものではありません。PSA値が高くても前立腺肥大症や炎症の場合もあれば、正常範囲内でも前立腺癌が見つかることもあります。そのため、総合的な判断が医師によって行われます。

治療法の違い|それぞれの選択肢

前立腺肥大症と前立腺癌は根本的に異なる疾患であるため、治療アプローチも大きく異なります。それぞれの治療法について解説します。

前立腺肥大症の治療法

前立腺肥大症の治療は、症状の重症度に応じて段階的に行われます:

1. 経過観察

軽度の症状で日常生活に支障がない場合は、定期的な検診で様子を見ることもあります。生活習慣の改善(水分摂取のコントロール、カフェインやアルコールの制限など)も併せて指導されます。

2. 薬物療法

中等度以上の症状がある場合は、以下のような薬物治療が行われます:

  • α1ブロッカー前立腺や膀胱の筋肉を弛緩させ、排尿を改善します
  • 5α還元酵素阻害薬前立腺の肥大を抑制し、縮小させる効果があります
  • 抗コリン薬・β3作動薬頻尿や尿意切迫感を和らげる薬です
3. 手術療法

薬物療法で効果不十分な場合や、尿閉(尿が全く出なくなる状態)などの合併症がある場合は手術が検討されます:

  • 経尿道的前立腺切除術(TURP)尿道から内視鏡を挿入し、肥大した前立腺組織を切除する手術
  • レーザー治療高出力レーザーを用いて肥大組織を蒸散・切除する方法
  • 前立腺動脈塞栓術前立腺に血液を供給する動脈を塞ぐことで、前立腺を縮小させる手技

これらの治療は、症状の改善を目的としており、生命予後に大きく影響することは少ないです。

前立腺癌の治療法

前立腺癌の治療は、がんの進行度(ステージ)、悪性度(グリーソンスコア)、患者の年齢や全身状態、PSA値などを総合的に判断して決定されます:

1. 経過観察(PSA監視療法・アクティブサーベイランス)

早期の低リスク前立腺癌では、定期的なPSA検査やMRI、再生検などで経過を観察する方法も選択肢となります。特に高齢者や他の健康問題を抱える患者さんでは、積極的な治療よりもこのアプローチが選ばれることもあります。

2. 根治的治療

がんを完全に取り除くことを目的とした治療です:

  • 前立腺全摘除術前立腺と周囲の組織を外科的に切除する手術
  • 放射線療法外部から放射線を照射する方法や、放射性物質を前立腺に直接埋め込む小線源療法などがあります
3. ホルモン療法

男性ホルモン(テストステロン)の作用を抑えることで、がんの増殖を抑制する治療法です。進行癌や転移がある場合の標準治療となりますが、早期癌でも他の治療と併用されることがあります。

4. 化学療法・新規薬物療法

進行した前立腺癌や、ホルモン療法が効かなくなった状態(去勢抵抗性前立腺癌)に対して行われます。

前立腺癌の治療は、がんの状態と患者さんの状況に合わせて個別化されることが重要です。また、近年は副作用を最小限に抑えつつ治療効果を最大化する取り組みが進んでいます。

治療後の経過と生活の質

前立腺肥大症の治療後は、排尿症状の改善が主な目標です。一方、前立腺癌の治療後は、がんの再発や進行の監視が重要となります。

どちらの疾患でも、治療によって排尿機能や性機能に影響が出ることがあるため、治療選択の際には医師とよく相談し、生活の質(QOL)も考慮した判断が必要です。

前立腺肥大症から前立腺癌になることはあるの?

多くの方が気になるのが、「前立腺肥大症は前立腺癌に進行するのか?」という疑問です。結論から言えば、前立腺肥大症自体が前立腺癌に変化する(悪性化する)ことはないとされています。

両者の関係性

前立腺肥大症と前立腺癌は、以下の点で明確に区別されます:

  • 発生部位の違い前述のように、前立腺肥大症は内腺から、前立腺癌は主に外腺から発生します
  • 細胞レベルの違い前立腺肥大症は細胞の増殖による良性の変化であり、がん化(悪性変化)とは異なる現象です
  • 独立した疾患両者は別々の疾患プロセスによって生じるものです

同時に存在する可能性

前立腺肥大症と前立腺癌は同じ臓器に同時に存在することがあります。これは、一方が他方の原因となるわけではなく、単に同じ臓器に別々の問題が生じているという状態です。特に高齢になると、両方の疾患のリスクが高まるため、併存することも少なくありません。

注意すべきポイント

前立腺肥大症があると診断された場合でも、以下のような変化があれば前立腺癌の可能性も考慮して再検査を受けることが重要です:

  • ・PSA値の急激な上昇
  • ・症状の急速な悪化
  • ・新たな症状(血尿や骨の痛みなど)の出現

前立腺肥大症の診断を受けた後も、定期的な検診を継続することで、万が一前立腺癌が発生した場合も早期発見につながります。

早期発見・早期治療の重要性

前立腺肥大症も前立腺癌も、早期の段階で発見されれば、治療の選択肢が広がり、良好な結果が期待できます。特に前立腺癌は早期発見が極めて重要です。

前立腺癌の早期発見のメリット

前立腺癌は早期に発見されれば、5年生存率が90%以上と非常に高い数値を示します。一方、転移がある進行癌では生存率が大きく低下します。早期発見のメリットには以下のようなものがあります:

  • ・より低侵襲な治療が選択できる可能性が高まる
  • ・根治的な治療が可能となる確率が上がる
  • ・治療後の生活の質(QOL)が保たれやすい
  • ・経過観察という選択肢も検討できる

前立腺肥大症の早期治療のメリット

前立腺肥大症も早期に適切な対応をすることで、以下のようなメリットがあります:

  • ・症状が軽いうちに薬物療法で改善が期待できる
  • ・進行して重度の合併症(尿閉、尿路感染症、膀胱結石など)を防げる
  • ・膀胱機能の低下を予防できる

定期的な健康診断の重要性

50歳以上の男性、特に前立腺癌の家族歴がある方は、以下のような定期的な健康チェックを検討すべきです:

  • ・年1回程度の泌尿器科検診
  • ・PSA検査(血液検査)
  • ・必要に応じた画像検査

症状がなくても定期的な検診を受けることで、万が一の場合も早期発見につながります。特に前立腺癌は初期には無症状であることが多いため、定期検診の重要性が高いと言えます。

まとめ|適切な診断と治療のために

前立腺肥大症と前立腺癌について、その違いと特徴を解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます。

前立腺肥大症と前立腺癌の主な違い

  • 性質前立腺肥大症は良性疾患、前立腺癌は悪性腫瘍
  • 発生部位肥大症は内腺、癌は主に外腺から発生
  • 症状初期は似た排尿症状だが、癌は無症状のことも多い
  • 診断肥大症は直腸診や超音波検査が中心、癌はPSA検査や生検が重要
  • 治療肥大症は症状改善が目的、癌は根治や進行抑制が目的
  • 関係性肥大症自体が癌に変化することはないが、同時に存在することはある

受診を検討すべき症状

以下のような症状があれば、泌尿器科の受診を検討しましょう:

  • ・尿の勢いが弱くなった
  • ・頻繁にトイレに行く必要がある
  • ・夜間に何度もトイレに起きる
  • ・尿が出にくい、残尿感がある
  • ・血尿が見られる
  • ・下腹部や腰、骨に痛みがある

適切な医療機関選びのポイント

前立腺の問題が疑われる場合は、以下のような医療機関の受診を検討しましょう:

  • ・泌尿器科を標榜している病院やクリニック
  • ・前立腺疾患の治療実績が豊富な施設
  • ・必要な検査機器が整っている医療機関
  • ・セカンドオピニオンも検討できる体制がある施設

最後に

前立腺の問題は、高齢男性の多くが直面する可能性がある健康課題です。症状があればできるだけ早く専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。前立腺肥大症も前立腺癌も、早期発見・早期治療によって良好な結果が期待できます。

「もしかして癌かもしれない」という不安から受診をためらうことがありますが、実際には多くの場合が前立腺肥大症であったり、早期の前立腺癌であったりします。不安を抱えたまま過ごすよりも、専門医に相談して正確な診断を受けることが、あなたの健康と安心のために最も重要なステップです。